菓子一覧

About Kyogashi - Japanese Sweets

9人の亭主と9人の菓子職人、それぞれが想う客を迎えるために紡ぐ「ものがたり」。亭主が客を、職人が亭主を想いあつらえた9組18種の菓子が会場に展示されます。菓子は食べることで完成する芸術です。会場では、事前のご予約で抹茶とともに味わい、物語を読み解いていただけます。

※一日に提供できる数に限りがございます。ご希望の菓子がございましたら、お早めのご来館をおすすめいたします。
※特定の菓子のご予約は承っておりません。

天野喜孝 亭主 × 植村健士 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「遺伝子の記憶」/ 客「二千年後の自分」
天野は、二千年後の自分に二千年後の技術を使ったモンブランを食べさせたいと考えた。植村は、天野の代表作の一つ「ファイナルファンタジー」に登場する「クリスタル」を用いて、モンブランを現出させることを考えた。二千年後の地球に、果たして栗は存在しているだろうか。二千年後もこの世に存在しているであろう、DNAの螺旋構造から栗が生成されると仮定し、あえて視覚的に表現した。
呈茶菓子提供予定日:1/29(月), 1/31(水), 2/1(木), 2/4(日), 2/6(火), 2/12(月・祝)
菓子職人 → 亭主
菓銘「獅子王」
天野が雑誌「獅子王」の表紙として描いた作品に寄せて創菓。くるりと巻いているのは獣の尻尾。中餡のオレンジ色は女神が手にもつ珠。羽衣のようなものを千筋にて表した。こなし製。
呈茶菓子提供予定日:1/31(水), 2/1(木)他予定

池坊専宗 亭主 × 塩貝祥代 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「きのう見た、そら」/ 客「心静かな人」
池坊は、自身も菓子作りを体験したうえで、菓子の注文を写真とことばで伝えた。「偶然出会ったことが、自分にとって必然と感じられることは意外とよくあると思います。いつもの朝の散歩や仕事の帰り道に見上げた空がふと心に留まったことは、誰にでもあるのではないでしょうか。逆に、自分が仕事をしていたりスマホを見ていてカーテンを閉めていたある日の空が、知らない誰かにとっては忘れられないような光景になっていたかもしれません。そんな、毎日当たり前に繰り返される偶然の移ろい、なんでもない一瞬が心の絵となっていく。そうしたイメージが、京菓子という世界でも共有できればと思います」

この注文を受けて、塩貝はこし餡に外郎、吉野羮を用いた菓子を制作。何度も対話を繰り返し、完成させた菓子は、誰にでもある日常のふとした、それでいて特別な時間へと食べる人を誘う。
呈茶菓子提供予定日:1/28(日), 2/1(木), 2/3(土), 2/6(火), 2/7(水), 2/12(月・祝)
菓子職人 → 亭主
菓銘「行雲流水」
塩貝は、池坊の考え方に共鳴し、菓子を制作した。
以下は塩貝からのメッセージである。

「今回菓子を作らせていただく中で、当たり前の景色は当たり前ではなく、二度と同じ色の空や雲の形が無いように、すべてが偶然の積み重ねであり、あるがままの自然な姿が最も美しいことを、改めて教えていただいた気がいたしました。そんな偶然の一コマを切り取ったような、そんな菓子になればと思い作製いたしました。」薯蕷饅頭製。
呈茶菓子提供予定日:なし

叶松谷 亭主 × 今西善也 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「ひとすじ」/ 客「縄文時代の陶芸家」
叶は「縄文時代の陶芸家に菓子を贈りたい。その時代のクリなどの、木の実を使ったものがいい」という注文をした。今西は、ナッツや木の実のイメージを転換させ、縄文人が木の蔓や縄で模様をつけていた感じと、一つの線が昔と現代にいたる線というイメージを、こなしで表現した。
呈茶菓子提供予定日:2/6(火), 2/7(水), 2/9(金), 2/10(土), 2/11(日)
菓子職人 → 亭主
菓銘「焔(ほむら)」
叶の「ピンクのお菓子など縄文人は食べたことないだろうから、驚かせたい」との発言を受け、紅色で、炎をイメージして制作。「縄文人も叶さんも炎を見つめながら生きてられるので、そんなイメージです。」練り切り製。
呈茶菓子提供予定日:2/6(火), 2/7(水), 2/9(金), 2/10(土), 2/11(日)

川邊りえこ 亭主 × 垣本晃宏 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「sacred orb」/ 客「秦氏」
川邊は、初午の時期にちなみ、古代に大陸から渡来し日本文化の成立に多大な影響をもたらした秦氏の方々をお招きするイメージで、宝珠の菓子を注文した。これに対し、洋菓子のパティシエとして世界的に名を馳せる垣本が、茶席菓子に挑んだ。古来、異国文化を取り込んできた日本。和菓子もまた、古くは大陸から、また西欧文化も取り込み成立している。とりわけ、茶の湯は「和漢の境をまぎらかす」、つまり、古来の文化と外来の文化の双方を大切にしながら、その「境」をいかにまぎらかすのかが肝要とされた。羊羹や寒天に、柚子や珈琲の風味をきかせた、まさに、境界の菓子。
呈茶菓子提供予定日:1/29(月), 2/2(金), 2/3(土), 2/4(日), 2/5(月), 2/8(木), 2/9(金), 2/11(日), 2/12(月・祝)
菓子職人 → 亭主
菓銘「鶴寿ーKAKUJU」
天然記念物の丹頂鶴が年間を通じて姿を見せる北海道・弟子屈(てしかが)の地に拠点をもつ川邊。垣本は、鶴を抽象化した和菓子の典型的なかたちをあえて用いて、川邊の自然に対する愛情を、菓子にこめた。こなしの生地に、アーモンド風味の白餡、塩胡桃を用いた、垣本ならではの新たな味覚の菓子。
呈茶菓子提供予定日:1/29(月), 2/2(金), 2/3(土), 2/4(日), 2/5(月), 2/8(木), 2/9(金), 2/11(日), 2/12(月・祝)

串野真也 亭主 × 金谷亘 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「零れ落ちて、なほ」/ 客「言葉を持つ人」
串野は、菓子の注文をデザイン画と銘で伝えた。また、「パリッとした飴と餡」という食感にこだわった。音をたてさせないという茶席菓子の常識をあえて覆すような趣向。しかも、飴と餡をあわせるという、飴の物理的な性質を考えると、常識的には不可能に近い注文だった。金谷は飴を扱った事はほとんどなかったが、菓子の構想を聞いてどうしても形にしたいと試行錯誤を重ねた。山茶花の蕾と花弁は、人生の時間の経過を表しているという。「お召し上がりになられる方が、自然の中の景色を思い起こされるようなお菓子になれば」との思いを込めた。
呈茶菓子提供予定日:1/31(水), 2/1(木), 2/4(日), 2/7(水)
菓子職人 → 亭主
菓銘「枚手(ひらで)」
金谷は、串野が動植物を素材として取り入れた靴を制作していることに着目。串野はあるインタビュー記事に「動植物は、自然の摂理の中でそうならざるを得ずにたどり着いた造形を持っており、それは人が遺伝子レベルで魅かれてしまう美しさの一つである」と発言している。金谷はここから、菓子においても「自然物のもつ形状そのものを生かす」という発想を借りた。一方で、全体の形状は「手なり」を意識した。「作為なく人間が手で作業する時に残るもの(残ってしまうもの)は、安心感や目的に向かう強い意思を感じさせ、それは和菓子が持っている〈思わず魅かれてしまう美しさ〉の一つではないか」と考えた。「二つの美しさの共存を感じていただけますと幸いでございます。」
呈茶菓子提供予定日:なし

森山未來 亭主 × 杉山早陽子 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「なぎ」 / 客「那岐山」
森山は、菓子の注文を映像とことばで伝えた。「うつろなからだに ぬけるかぜ もてあそばれて なぎのいただき」 この注文を受けて杉山は、山にとっては雲や雨がご馳走と考え、また〈うつろなからだ〉という言葉から、雲を象った淡雪の菓子を考案。そこに〈ぬけるかぜ〉をイメージした爽やかな味わいの寒天を通した。また素材には、那岐山の植生から想を得て、ヒノキ、クロモジの蒸留水を加えた。こうして誕生した菓子は、中国山地の秀峰那岐山の豊かな恵みをいただくかのようなものとなった。
呈茶菓子提供予定日:1/28(日), 1/30(火), 1/31(水), 2/2(金), 2/3(土), 2/5(月), 2/6(火), 2/8(木)~2/11(日)
菓子職人 → 亭主
菓銘「白昼夢」  
杉山が、森山の監督作品「in-side-out」からインスピレーションを受けて作った菓子。作中で主人公が妄想を巡らせ、部屋と森の境界線が曖昧になっていくシーンから着想を得ている。部屋を象徴するものとしての〈枕〉と、森の象徴としての〈木漏れ日〉。重なるはずのない2つの世界の曖昧な境界を表現した。素材は枕の触感を想起させる雪平製。中の餡は森を感じるイメージで。
呈茶菓子提供予定日:1/30(火), 2/2(金), 2/5(月), 2/8(木), 2/10(土), 2/11(日)

ヤノベケンジ 亭主 × 中丸剛志 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「宇宙夢」/ 客「太陽の塔」
中丸が、ヤノベの作品「黒漆宇宙眠り猫」の「後ろ姿」に一目惚れして創作した菓子。外側を、白小豆のこなしを竹炭パウダーで染めた黒色と、小豆のこなしで小豆色に染め分け、猫にちなんで「またたび酒」を入れた白餡を包んだ。こだわったのが「艶感」。寒天でコーティングすることで漆特有のしっとりした艶を表現した。
呈茶菓子提供予定日:1/28(日),1/31(水), 2/1(木), 2/3(土), 2/4(日), 2/7(水), 2/12(月・祝)
菓子職人 → 亭主
菓銘「SHIP'S CAT」
ヤノベの作品「SHIP'S CAT」からイメージして作った菓子。オレンジ色のこなしを猫の身体に見立て、つくね芋のきんとんで白い毛並みを、同じきんとんをピンクに染めて耳を、さらに錦玉で目を表現した。最後に、飴でつくられた透明の宇宙マスクを装着する。
呈茶菓子提供予定日:なし

夢枕獏 亭主 × 幾世橋陽子 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「氷隠梅(ひごもりのうめ)」/ 客「弓時」
夢枕は、この展覧会のために一篇の小説を書き下ろした。題して『菓子女仙』。幾世橋は小説を読み、その思いを菓子にした。以下は、幾世橋による制作手記である。なお、仙台在住の幾世橋は、今回の展覧会のために京都に来て呈茶用の菓子を作り、展覧会に臨む。1月28日、29日、30日の三日間、在館予定。

.......陰陽師『菓子女仙』より 
弓時と雅子という若い男女、ふたりは思いあっていましたが、弓時の身分が低いため一緒になることは叶いませんでした。 

ある時、弓時が雪と氷に閉じ込められた美しい白梅を「あなたのようだ」と言って食べました。それを見て雅子は「いつかあなたの為に梅の菓子を作ります」と約束しました。それがふたりの最後の逢瀬でした。

ー60年後、病に伏し、眠ったままの雅子の枕元に、若くして亡くなった弓時の霊が現れるようになりました。その霊を弔うために、雅子の娘は、遊仙という女道士に「氷隠梅」という梅の菓子を作って欲しいと願いでました。

遊仙は安倍晴明の導きにより「氷隠梅」を作り上げました。晴明の術で目を覚ました雅子は、弓時の霊に約束の菓子を渡すことができ、ふたりはやっと一緒になり、そして成仏することができたのでした。

文中よりー雅子がそれを手に取って紙の包みを開いてゆく、中から出てきたのは、それは、白い、かわいらしいものであった。半透明の皮のようなものに包まれたそのなかに、燈火の灯りを受けてそれがきらきらと美しく光っている。白い、小さな梅の花が一輪…

弓時様の霊を癒す菓子を作りたいと考え、「あなたのようだ」と言って食べた雪と氷に閉じ込められた白梅、雪と氷を錦玉羹と道明寺のお餅でイメージしてみました。香りたつ白梅は、練香を作るイメージで干し梅とこなしをすり鉢で練り、金箔で包み、菓子の中央にのせました。
呈茶菓子提供予定日:1/28(日), 1/29(月), 1/30(月)
菓子職人 → 亭主
菓銘「魚籠」
幾世橋は、夢枕さんへの菓子を制作。その思いを以下のように語る。
.......
夢枕さんの趣味のひとつに「鮎釣り」とありました。解禁日ともなると執筆意欲が削がれるほど鮎に焦がれてしまう。それほどまでにさせる鮎釣りの魅力に迫ろうと、夢枕さんの小説『鮎師』を読み込み菓子にいたしました。

小説『鮎師』は、ただの鮎釣り好きの主人公がひとりの男の存在によって、早川に住む大鮎を釣り上げることに執念を燃やしていく展開となっています。その中で興味深かったのは、釣り道具へのこだわり、釣り方、釣る場所まで、天候と沢山の駆け引きその中でせっかく大量に釣り上げた魚籠に入った鮎を、家族に鮎釣りをしていたことがバレないように、川に戻すところでした。

川に戻す時、きっと釣り師は魚籠の中の銀鱗を何度も覗き込み、そして高揚することでしょう。魚籠とは魚を入れておく籠ですが、釣り人にとっては、幸せや満足感を詰め込むものなのでしょう。そこに「壺中有天」を感じました。

人生とは、いろいろなことが予想外な方向から容赦なしにやって来ます。自分の別天地、人知れぬ世界観を持っていると、それが人生の波乱の中で救いとなり、生きる支えにもなるのだと気付くことができました。魚籠であり、壺中であり、鮎一束の夢の台風の目にも見えるように作りました。

こしあんを、青のりと黒すりごま入りのこなしで包みました。魚籠の中の銀鱗をイメージして銀箔をまぶた丸い錦玉羹を埋め込んでいます。
呈茶菓子提供予定日:1/28(日), 1/29(月), 1/30(月)

ルシール・レイボーズ 亭主 × 髙家裕典 菓子職人

亭主 → 菓子職人
菓銘「1 + 1 = ONE 」/ 客「Yusuke Nakanishi」
菓子のコンセプトは〈COMPLEMENTARITY ー相補性〉。Complementarity(コンプリメンタリティ)とは、2つのまったく異なる要素が互いに補い合い、高め合う関係性を意味し、KYOTOGRAPHIE と KYOTOPHONIE を共同主宰する中西祐介(Yusuke Nakanishi)へのメッセージである。この注文を受けて、髙家は、白と黒というもっとも根源的かつ対極にある色を組み合わせた小田巻きんとんを制作した。中にはピンク色の餡。甘い餡にあえて塩を加えることで味覚の相補性も演出されている。
呈茶菓子提供予定日:1/30(火), 2/2(金), 2/5(月), 2/8(木), 2/10(土)
菓子職人 → 亭主
菓銘「生」
ルシール・レイボーズの写真集 BATAMMABA BATISSEURS D'UNIVERS 収録の一枚の写真から想を得て作った菓子。アフリカのトーゴとベナンの国境にあるタンベルマという村で誕生した命を、黒糖求肥練切で表現した。
呈茶菓子提供予定日:1/30(火), 2/2(金), 2/5(月), 2/8(木), 2/10(土)